低気密住宅では隙間風が発生します。すると室内では温度差が発生し、これによって子どもの風邪やアレルギーだけでなく、高齢者がヒートショックで死亡するケースの健康被害が生じるなど、決して安易な問題とは言えません。このような住宅を建てないためにも、C値を理解し、隙間風の発生しやすいポイントを抑え、建てる前に知識を身につけることが重要です。
C値とはすなわち「住宅の隙間」の量を数値化したものです。
【低気密の家には隙間がある】
昔の木造住宅では、約はがき10枚分もの隙間があった!
家に隙間があると言ってもピンとこないかもしれません。もちろん目に見えるような大きな隙間ではありません。しかし低気密住宅ではコンセントの隙間、配管まわりなど目の届かないところから隙間風は確実に室内に侵入しています。風呂場やキッチンまわりが寒く感じるのはこれが原因です。昔の住宅ではこの隙間を合計するとはがき10枚分程の隙間になったといいます。あなたの家の隙間はどれくらいでしょうか?
【隙間のある家では温度差が生じる】
温度差が生じた結果、健康に悪い住宅に
低気密住宅では煙突効果により暖かい空気は天井へ漏れていき、床下からは隙間より冷たい外気が侵入します。これによって室内では温度差が発生します。室内の上下温度差は2℃〜3℃が望ましいとされますが、低気密住宅ではそれ以上の温度差になってしまうのです。その結果、家の中では結露が発生します。この結露が住宅の内部でも発生すると、家そのものの耐久性に関わり大きな事故に発展しかねません。他にも結露がカビの発生につながり小さなお子様がアレルギーを持ってしまう、寒さで風邪を引きやすくなってしまう、高齢者のヒートショックなど、温度差による健康被害が発生してしまうのです。
【C値とは】
隙間の面積を合計したもの
住宅の機密性能を表す数値で、隙間面積を延べ床面積で割って出した数値です。数値が小さいほど気密性が高いと言えます。逆に数値が高い場合は気密性の無い、スカスカの住宅だと言えます。
C値=相当隙間面積 ㎠/㎡
【目指すべき数値とは】
次世代省エネルギー基準(平成11年基準)でのC値は、
Ⅰ・Ⅱ地域(北海道、青森他)で2.0㎠/㎡以下、
Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ地域(宮城、山形他、関東以南)では、5.0㎠/㎡以下、
と記載されていました。平成21年の改正により、現在ではC値の定量的な設定はなくなりました。では、やらなくていいのでしょうか?答えはもちろんNOです。
計画換気のための気密性能となると、C値=1.0㎠/㎡以下、強風の影響や内外温度差の影響を受けないで計画換気を達成出来るレベルはC値=0.5㎠/㎡以下の気密性能が要求されます。
計画換気に必要なレベル=0㎠/㎡以下
C値1.0㎠/㎡=はがき1枚分の隙間
強風の影響や内外温度差の影響を受けないレベル=5㎠/㎡以下
C値0.5㎠/㎡=はがき半分の隙間
【気密測定とは】
C値を測定し、気密性能を測る
「気密測定」とは住宅の隙間の量を計測する検査のことです。この気密測定により、住宅の相当隙間面積がわかります。この測定により、しっかり気密性がとれているのか、またとれていない場合はどこに問題があるのかを把握しなくてはいけません。測定には下の写真のような装置を使用します。
【気密のポイントを押さえ、隙間風を防止する】
C値=2.0㎠/㎡の住宅の例
C値=2.0㎠/㎡の住宅において、レンジフードを強運転(約300㎥/h)にした時のコンセントボックスやスイッチボックス、キッチンの配管からどのくらいの流速で隙間風が侵入しているかを測定した結果です。その結果、全ての測定において、不快に感じる流速の0.2m/sを超えており、服を脱がなければならない洗面脱衣所では2.03 m/sと外の風速並みの速さで風が吹いていることになります。これでは寒いどころかヒートショックの原因にもなりかねません。この住宅では断熱材のつなぎ目や天井部の取合いには気密シートや気密テープを施行していますが、床周りの処理や浴室下部の基礎断熱部分の気密処理が徹底されていない為に、気流が発生してしまったのです。
気密性能を高めるには気密のポイントを知ること
隙間が出来やすい=気密処理がしづらいということです。また現場では施行作業者の腕によって気密性能が違ってくる事もあります。全ての現場で気密性能の標準化をするには、隙間ができやすいポイントを押さえ、簡単に気密がとれる部材を使用して対策をすることが重要です。